私のレッスン生に地無し尺八を愛用されている方がおいでます。横山本曲には二段メリとかチルなど深いメリを必要とする手法が頻出しますが、その方は地無しで楽々その技をクリアされています。またチのカリやロのカリも軽々と演奏されます。地無し尺八がなぜそれほどメリカリが効くのか、その理由がわかってきました。まず地無しは通常全力で吹く吹き方はしないということです。内部に残る節の影響で力任せに吹くと竹に反発されるばかりで、７～８割の力で楽に吹くと気持ちよく鳴ってくれます。またメリは息の量を半分以下に落とします。大メリのときはもっと少ない息の量で慎重に息を送り込むイメージです。地無しでは息量の最適化が必須条件になりますが、長年地無しを愛用している方はそれが自然にできるようになっているのではないかと思います。

KSK（国際尺八研修館）系の曲を演奏する人に大人気の「龍畝」はどこにその理由があるのでしょうか？ これも「こんちゃん」宅で長短二種類の「龍畝」を吹かせていただいた時にすぐに理由がわかりました。それは音色の良さもさることながら圧倒的に二段メリ（場合によってはそれ以上の深いメリ）がやりやすいのです。またチルツル（8寸管の場合A♭、G、E♭、Gを特別な運指で弱音で出す奏法）がいとも簡単にできるのです。「龍畝」菅の歌口最上部は水平に近い緩傾斜で「泉州」の急角度とは対照的です。また「龍畝」はアゴあたりの部分をバッサリと削り落としているのも特徴です。これはREIZANの仮説ですが「龍畝タイプ」の歌口は通常の構えで吹いた場合にエッジ近くの空間が大きく「ほんの少しカリ気味」に近い状態になっているのではないでしょうか？ 柔らかく唇を使って吹くとその状態でもエアリーにならず充実した音が出せます。それを「常態」とするならばそこから半音下げ（半メリ）一音下げ（メリ）は容易で、さらに一音半下げ（二段メリ）も他の尺八に比べてやり易いと感じます。またカル場合は顎あたりを大きく削ぎ落としているので一気に大きくカルことも可能です。

今回の尺八は地無しでは最高水準の鳴りをもっています。また歌口を「龍畝タイプ」にすることで横山本曲を吹くのにはぴったりの深いメリが自在に操れる尺八が出来上がりました。長さは580mmで２尺管にしては短く１尺９寸管にしては長いので筒音はCとC♯の間ぐらいでした。どちらか一方に近づけようと思えばできたかもしれませんが、この尺八本来の響きを重視してそのままにしています。調律は伝統調律と現代調律の中間で両方の奏法に対応することができます。時代を経た竹が持つ独特の味わい深い奥行きのある音がします。https://youtu.be/b4w4cktKEyQ

【諸元】

長さ 580mm 重さ349g  頭部直径38mm   底部直径47mm 歌口内径縦20mm 横20mm エッジ深さ4mm弱 最大指孔11mm

一部に浅いクラックがありますが演奏に全く問題ありません。また念のためテグスで補強しています。

PC動作環境などで色味が異なることがあります。何か疑問点があればご質問ください。なお取引はNC/NRでお願いします。お手持ちの量産尺八を改造したい場合には質問コーナーに電話番号をいれてお送りください。折り返しSMSにてご連絡します。質問には答えませんので電話番号が公開されることはありません。落札された方は必ず落札後48時間以内に手続きを開始するようお願いします。（落札代行業者の方はご注意ください。） また、評価が著しくよくない方は入札を取り消す場合があります。