四季折々に変化する風と光、豊かな生命があふれる美しい海、そんな沖縄の自然の中で七十年以上の歳月を琉球紅型に捧げてきた作者が作り出す作品は、伝統的ではあるものの、「紅型の伝統を踏まえながら、日本の着物として時代のニーズにこたえる作品を創る」ことを掲げる作者らしく、モダンで、飽きのこない魅力と品格があります。古典作品の復元にとどまることなく、古典柄をモダンにアレンジした新柄、海や魚たちを始め沖縄の風物を取り入れた独自の模様は、作者が新しく開いた紅型の世界です。


紅型独特の濃厚な世界観で海や水の流れ、自然を表現したこの作品は、沖縄独特の海の色、深い黒潮の色から近くて浅い海のコバルト色という微妙で奥行きのある青の色づかいが見所です。色の濃淡を並べて徐々に色を濃くして流れを作り、さらに背景の白が生きるような紅型独特の型彫りをしています。さらに隈取りにより、効果的な部分に思い切った色を置いて丹念にぼかしてゆくことで、深い奥行きのある表情、立体感をもたらしています。


作者の創作活動のテーマである「海浜波」の、水の揺れるような動きが感じられるこの作品では、繊細に描かれた花が優美な曲線の動きを作り、海草がやわらかく波打ち、美しい曲線で動きや生命を感じる波を描いています。そこに古典をアレンジしたモチーフを幾何学的な並びで組み合わせ、型染めの特徴を活かしてリズミカルかつ飽きのこない、完成されたデザインを作り出しています。

自然の生き生きとした表現、文様の配置のバランスや立体感を生み出す色合いの巧みさは、布地の上に幾重にも変わる豊かな表情を作り出します。それは、紅型宗家の十五代目として、紅型の世界で育ち培われた感性と熟練の職人としての長年にわたる経験のみが作り出すことのできる、手間暇をかけた芸術です。

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