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カリマンタン島(旧ボルネオ)に暮らすダヤク(Dayak)族は、その昔首狩り族として名を馳せました。部族戦争が日常的に繰り返されていた当時、ダヤクの人々は、日本の戦国時代の武将さながらに、敵の大将の首を取ることが“勝利”の証となりました。かといって、“敵”以外の首をはねることはありませんでした。精霊への畏怖と、呪詛による生活サイクルの決定が存在した時代、ダヤク族は、一見原始的に映る風習の中で、部族長と呪術師の指導の下で、堅固な生活規範と部族集団としての秩序を守っていました。しかし、外部より移住してきた多民族・異文化に押しやられるように、その伝統的な因習は失われていきました。
写真は、カプアス川上流部に暮らす高地ダヤク社会の高位のシャーマンが用いていた“スピリッツ・ボート”と訳される、祈祷用の道具です。主に悪霊払い、そして招福を目的として、ヒーリング・セレモニーを執り行う際に使用していました。なんとも不気味な形をしています。ダヤク族神話で神として登場するアソ(ドラゴン・ドッグ)に模した船体部分。中央には帆に見立てた木彫りの頭蓋骨が計5体。土台に差し込む仕掛けで、案山子のように立っています。それはあたかも“晒し首”かのようです。帆は、薄汚れた血のような赤・黄色のイカット(絣織り)です。裏側には、一体の木彫り人形がくくり付けてありますが、その意味は不明です。“生贄”とでも想像すればいいのでしょうか。トップに載っている動物の頭を持った小船も、どのような意味合いを持つのか不明です。おそらく薬草や聖水などを入れるための容器としての役割を持っていたのでしょう。今風に使うのならば、ここでお香を焚くのもいいかもしれません。長らく門外不出だったこの“スピリッツ・ボート”は、推定で一世紀前後の古さの物と思われる極めて希少な逸品です。
サイズは、下部のドラゴン・ドッグ二対の最大横幅が58cm、高さは41cm、最大奥行きはおよそ15cm前後です。重量は約2.3kgです。 (注)台座のドラゴン・ドッグの一脚に“骨折”を補修した跡が残っています。予めご了承お願いします。 インドネシア文化宮は、インドネシアの24時間ニューステレビ局『メトロTV』東京支局がプロデュースするインドネシア情報発信基地です。
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