現在では尺八のピッチをA＝442に合わせることが一般的になっていますが、ちょっと前は440でした。地無し尺八の時代にはチューニングメーターも調子笛や音叉もあるはずもなくピッチはまちまちであったのは当然です。１尺８寸の長さの竹で製作すると内径の太い竹の場合、D管よりも低いピッチになります。それはそれでしっとりと落ち着いた雰囲気なのですが、大勢で合奏する場合には埋もれてしまいます。自分の音をはっきり聞きたい場合は高めのピッチにする方が楽です。54cmよりも短めの地無し管が散見されるのはそのような理由ではないかと推測しています。また地無し尺八はメリ気味に演奏するのが基本で、その方が本曲に適した音色が出せることも理由だと思います。今回の楽器は「龍畝タイプ」の歌口にしているのでメリカリの幅が特に大きく、深いメリ吹きをするとD管になりますが普通に吹くと高めになります。D～D♯というのはそう言う意味です。

西洋楽器においてもバロック時代の調律は今よりほぼ半音低かったとされています。実際古楽器アンサンブルではそのように調弦しています。また時代のみならなず地域にによってもピッチはまちまちでした。どんなピッチであろうと合奏する場合にぴったり合っていれば問題はありません。まして合奏を前提としない場合は442であろうが432であろうがどのようなピッチであってもその楽器の「音の空間」「音の世界」を作り出すことはできるのです。

ある流派の献奏（大勢で一斉に演奏）を聞いたことがあります。みな８寸管のはずなのですが、吹き始めは皆バラバラでとても「合奏」には聞こえません。大勢の僧侶が一斉にお経をあげている感じです。ピッチを全体に合わせることができる人はそのように努力するのですが、全く無頓着な人もいます。でも全体としては「大きな音の塊」となり空間を覆っていきます。「これはこれでありだな」と思った次第です。他の楽器とのアンサンブルをする時を除いて、尺八のピッチは自由でもOKというのが今の考えです。

二人の尺八演奏法（正確に言うと尺八の持ち方）に共通点があることに気づきました。それは上の持ち手の小指が尺八の下にあることです。通常小指は楽器よりも上にあげて薬指の運動性を損なわないように教えられます。小指をそうする何かメリットがあるのでしょうか？Youtube動画をじっくり観察していてその理由がわかってきました。特に山口五郎師に顕著なのですが「甲のチ」の際、薬指を第３孔にわずかにかざしているのです。お二人とも尺八は「四郎管」「如水」という古い尺八を使用されていました。古い伝統調律の場合、強く吹くと「チ」の音程は必ず上ずってしまいます。正しい音程のAを出そうとした場合、乙音はメリ気味で、甲音はそれに加えてカザシ操作をする必要があるのです。その操作がやりやすいように薬指と小指の位置を決めていたのではないでしょうか。今回出品の尺八は伝統調律なのでその操作をしなければなりません。素早いメリカリができる中級者以上向けです。音色は繊細・華麗だと思います。こんな音がします。https://youtu.be/ppBGzOjLU6E

【諸元】

長さ 525mm 重さ303g  頭部直径37mm   底部直径52mm 歌口内径縦20mm 横20mm エッジ深さ3.5mm 最大指孔10.5mm

一部に浅いクラックがありますが演奏に全く問題ありません。また念のためテグスで補強しています。

PC動作環境などで色味が異なることがあります。何か疑問点があればご質問ください。なお取引はNC/NRでお願いします。お手持ちの量産尺八を改造したい場合には質問コーナーに電話番号をいれてお送りください。折り返しSMSにてご連絡します。質問には答えませんので電話番号が公開されることはありません。落札された方は必ず落札後48時間以内に手続きを開始するようお願いします。（落札代行業者の方はご注意ください。） また、評価が著しくよくない方は入札を取り消す場合があります。

「玄」は25℃で442Hzになるよう設計されていますが多くの人は442に届きません。音程を上げるために常に「カリ気味」で演奏しなくてはならないのは苦痛です。

①管の頭部を数mm削って歌口を作り直し全体のピッチを上げ、②管尻孔や指孔で音程の微調整を行い、③歌口やアゴあたりの形はご要望に答えます。

詳しくは質問欄に（玄改造、携帯番号）でお知らせください。折り返しご連絡を差し上げます。